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2013年 冬号 佐久穂町 きたやつハム / 春号 佐久穂町 八千穂漁業 / 夏号 南牧村 滝沢牧場 / 秋号 松本市・乗鞍高原 樽スピーカー

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2010年 冬号 須坂市 ミニ和紙人形 / 春号 筑北村 木工スプーン / 夏号 松川村 古布手芸 / 秋号 池田町 バッグ

2009年 冬号 須坂市 まゆ人形 / 春号 布ぞうり・布スリッパ / 夏号 南相木村 機織り / 秋号 小海町 木彫り人形

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この記事は2009年夏号です

◎お問い合わせは…
南相木温泉「滝見の湯」
長野県南佐久郡南相木村5633-1
TEL0267-91-7700
※バッグや写真(上)のちづさんがかぶっているような帽子を滝見 の湯で販売しています。


 「楽しい人生ですよ」とにこにこと笑う倉根ちづさんは、機織り名人の89歳のおばあちゃん。緑が豊かな山あいの村に住んでいる。

 「生まれも南相木村。村から出た事がないんですよ」とちづさん。機織り機の前に腰掛けると、足と手を器用に動かし、トントン、と機を織っていく。夢中になって機織りをする姿は若々しい。

 緑に映える紫色のアイリスや、淡い赤色のサラサドウダンツツジが咲く庭に面した小さな機織り場。一人暮らしをする自宅とつながった小さな機織り場には、家族に作ってもらった「ちづの機織り工房」の看板がかかげられている。部屋の中央に置かれた年代ものの機織り機は150年も前から、使われてきたものだという。

 「これはねぇ、ご先祖さまが使ってきた機械なんです。嫁にきたこの家にあったもの。私がこれだけ織ったのですよ」と指差した機織り機の上の位置には色とりどりの糸がたばになってくくられている。

 「織り終わったら最後の糸をつけるんですよ。機(はた)神様といって、織らせて頂いてありがとうって感謝の気持ちを込めてつけるものなんです。祖母達の糸はだいぶ朽ちて落ちてしまいましたが」とちづさんの娘の世津江さんは話す。代々受け継がれてきたしきたりだ。

 ちづさんは25歳の時に、冬の間に松本まで機織りを習いに行った。昔は自分達で織った物を着ていたから、女性の仕事として日本のいたるところで織られていた。ちづさんも実家にあった機織り機に触れ、だいだいは織ることができたよう。

 「戦争があり、男の兄弟は皆戦争に行ってしまった時代に、女の人は家を守り畑仕事をしていたりしていたんですね。それでおばあさんが、それだけじゃかわいそうだと思ったからか、冬の間だけ勉強に行かせてもらったようです」と世津江さんは話す。その後長野県の修練学校で機織りを教えていた事もあった。25歳の時に勉強したノートは今でも、折り方を確認するのために開く。茶色のハードカバーのノートで、丁寧な文字で色々な模様織のメモが書かれている。

 若い頃から始めた機織りだが、ますます熱心になって始めたのは80歳を過ぎてから。織物を教えている先生と出会い、様々な糸を仕入れてもらうようになり、また、洋服にしてくれる方と出会い、ベストやジャケットに仕立ててもらった。  85歳になった時、佐久市の喫茶ギャラリーでの作品展を開催。人との出会いに恵まれ、ちづさんの創作意欲もますます広がっていく。

 織物というのは、「たて」と「よこ」の組み合わせによって成りたっているもの。織りを始める前にまずたて糸の準備。たて糸を機にかけるまでの作業の整経を行い、機にたて糸を取りつける。細かく根気のいる作業だ。縦絖(そうこう)という、4枚の枠に何百本もの針金が縦に並んでいるものがあり、この縦絖、そしてよこ糸を打ち込む櫛のような形のおさの一本一本の間に、数千本ものたて糸を通す。この縦絖とピアノのペダルのような4本の足板をつなぎ、足板を操作することで縦絖が上下に開き、その開いたスペースによこ糸を入れていく。

 ちづさんは「1、3、1…」と小さく声に出しながら、両足で足板を代わる代わる踏み変え、よこ糸を入れ打ち込んでいく。ちづさんの手足が機と一体になってみるみるうちに、鮮やかな模様の入った織物ができあがってくる。

 毎日歩いて出かける畑にはブルーベリーや蕎麦が植えられている。昼夜の寒暖の差が激しいこの地ならではの美味しい実りとなる。

 「毎年たくさんの知り合いがブルーベリーを採りにくるんですよ」と微笑むちづさん。夏になると収穫を楽しみに、そして何よりちづさんに会うために多くの人がここに訪れている。

  “人との出会いが元気の素” ちづさんというたて糸に、出会ってきた人のよこ糸が重なり合う日々の織物。それは夢中になってしまうほど、楽しくてカラフルな模様だ。



色の組み合わせ方が個性的なちづさんの作品。世津江さん手作りのぼうしやバッグは滝見の湯で販売している。
 
踏み木を踏みことによって、たて糸に隙間ができそこによこ糸を通し、おさを手前に打つ。
 
機にたて糸をとりつける細かく根気のいる作業をまず先に始める。たて糸をとりつけ終われば、織りの作業はどんどん進む。
 
150年も前から、修理をしつつ代々使われてきた機織り機。感謝する心を忘れず、機と一体にいなって作業をするちづさん。
 



「滝見の湯」横を流れる犬ころの滝
 長野県の東端に位置にある南相木村は、秩父山系の一部に位置し今なお豊かな自然に囲まれた山あいの村。南相木川が村の中心に流れ、その支流が作り出した渓谷には、県の名勝に指定されている「おみかの滝」をはじめとした7つの滝があり、滝めぐりも楽しめる。自然観察やバードウォッチングに最適な立原高原は、6月上旬頃になると、2万株以上もの野生のレンゲツツジが咲き誇り、赤いツツジの花が村を彩っている。
 この豊かな緑に囲まれた村で機織り(はたおり)をする倉根ちづさん。 代々使ってきた織機に腰かけ、糸を操る手はきびきびと動き、同時に両足も軽快なリズムを踏む。天気が良ければ毎日歩いていける畑へ行き、雨の日になると機織りをする生活。現在89歳のちずさんだが、80代に入ってますます機織りをする時間が増えたと言う。

 

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