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2018年 冬号 高森町 市田柿 / 春号 松本市新奈川温泉 旅館鳥屋沢 / 夏号 小海町 たかちゃん・ふぁーむ / 秋号 飯山市 旬菜料理はたの

2017年 冬号 野沢温泉村 とみき漬物 / 春号 中野市 押鐘園 さくらんぼ / 夏号 松本市奈川 好きですね奈川 / 秋号 飯山市 角口酒造店

2016年 冬号 南牧村 野辺山霧下キムチ / 春号 小海町 珈琲焙煎工房2+1 / 夏号 佐久市 銘菓「五稜郭」玉屋 / 秋号 佐久穂町 りんごやSUDA

2015年 冬号 高森町 信州市田酪農 / 春号 飯山市 田中屋酒造店 / 夏号 さかえむらトマトジュース / 秋号 木島平村 芳川養蜂場

2014年 冬号 須坂市 楠わいなりー / 春号 木島平村 オーベルジュ・グルービー / 夏号 栄村 山ぶどうバッグ / 秋号南相木村信州田舎暮らし

2013年 冬号 佐久穂町 きたやつハム / 春号 佐久穂町 八千穂漁業 / 夏号 南牧村 滝沢牧場 / 秋号 松本市・乗鞍高原 樽スピーカー

2012年 冬号 池田町 陶芸 / 春号 白馬村 革バッグ / 夏号 津南町 染織 / 秋号 信濃町 暮らしの人形

2011年 冬号 白馬村 木彫りアート / 春号 須坂市 はんこ / 夏号 塩尻市 ボタニカルアート / 秋号 飯山市 シュガーアート

2010年 冬号 須坂市 ミニ和紙人形 / 春号 筑北村 木工スプーン / 夏号 松川村 古布手芸 / 秋号 池田町 バッグ

2009年 冬号 須坂市 まゆ人形 / 春号 布ぞうり・布スリッパ / 夏号 南相木村 機織り / 秋号 小海町 木彫り人形

2008年 冬号 中野市土人形 / 春号 松川村お面 / 夏号 信濃町南米民族音楽 / 秋号 佐久穂町創作リース

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この記事は2012年秋号です

〒389-1316
長野県上水内郡信濃町大字大井2216-3

http://www.todasumie.com

Eメール: noichi@hb.tp1.jp


 「創りはじめた頃の人形を見ると、骨格や筋肉の造形などありえない状態なのですが、とにかく人間の形をしたものを創りたかったんだと思います。創っては人形に性格づけをして可笑しなタイトルをつけていました。“意地悪なのに仲間になりたい女”とか“金物屋に走る男”とか」。そう話す戸田澄江さんは信濃町で人形を制作している。結婚後信濃町で暮らして30年という。

 「信濃町の中のこの集落のなか、半径100メートルほどの範囲でほとんどの時間を過ごします。畑の作物を覆う土の事を考えたり、ご近所のお庭の花を見たり、道ばたを這うアリやカエルの事を面白く観察しています」。

 人形制作を始めたのは20年ほど前。子育ての合間を見つけてできた時間で何か社会とのつながりを持ちたいと考え、最初は小さな動物や家、妖精などを制作して委託販売等をしていた。今のような独創的な人形を創り始めたのは2000年頃から。

 「人形の顔は、本当に変てこな顔をしているんです。少しづつ変わってきてはいますが、今も変わらず可笑しな顔です。最近は骨格や筋肉、関節などを意識して造形するので以前よりは人間らしい姿になりましたが、一番最初に創った人形の『おしゃべり』をしそうな感じが今では『沈黙』に変わりました」。  

 制作は、簡単なスケッチから始める。分からない時は自分の腕や手の動きを見ながら描いたり、旦那さんに「こういうポーズしてみて」と確認をする。ボディは針金で芯を作り、包帯と綿で軽く肉付けする。痩せたミイラのような状態から、石粉(せきふん)粘土で造形していく。彩色はマットな質感で発色が良いアクリルガッシュという絵の具を何年も使っている。

 「10数年の間には、制作する上で技法や表現内容など何度か変える事がありました。それまでは衣服等の柄など、細い面相筆で描いていたのですが2006年頃から彫刻刀で“彫り”を加え、彩色の時にできる凹凸の色の変化を試みました。

 2008年にはさらに蚊帳等の麻布を貼り、液状粘土で固めてコスチューム等の質感を出しました」。

 布のざらざらした凹凸のへこんだ部分に最初に塗った色が出て、乾かしては2回、3回と色を重ねる。そうする事で色の奥行きが出る。  

 「人形のコスチュームについても造形的に大きく変わる時期にきていると思っています。これまでは人形に服を着せるような造形をしてきましたが、表現するものによっては着ているという事が邪魔になることがあります。内面的なものを表現しようと思ったら服を着ている事に意識がいかないようなものでなければと思っています」と話す。

 「時々人形を取り出して眺めると、制作のうえでこの先どうしたら良いのか見えてくる事があります。造形力についてはもちろんですが、『表現する』という課題についてもです。

 たとえば花や野菜の種を蒔いたとします。毎日お水をあげて世話をしていると、どんどん大きくなってすごく愛おしく思います。でもその可愛さを粘土で造形しようとするのはとても難しい。世話をして可愛いと感じたのは、成長するという進行形の状態が愛おしいのであって、その事を造形して表現するのは今の私には無理だと思っています。それでは何を表現するかというと“愛おしい”“美しい”“すごい”と感じた自分の気持ちではないかと思っています」。

 「私が今この場所に住んでいて、ここで生活をしている。その中でちょっと深く考えた事を表現していきたい。狭い範囲のちいさな事ですが、目に入るものや手に残る感触、深く考えるべき現象という面では事欠かない場所だと思っています」。

 ちょっと立ち止まって心に浮かんだ思いを、ゆっくりと咀嚼してみる。面白さは、日々の暮しの中にたくさん転がっている。




初期の作品から最近の作品まで。
 
左から『重要かもしれないと思いながら、通知を破く女』『土手でオオバコを見つけ、ウサギの好物だったと思い出した男』『カーテンでファッションデザイナーになる女』
 

『希望』
 
「回る」というテーマで制作している作品。「人物は二人ですが気持ち的には同化したものが出来ないかと思いつき、制作しています」と澄江さん。


可憐な白い花が一面に咲くそば畑

 新潟県との県境、長野県の北部に位置する信濃町は、青々とした黒姫山と妙高山を望み、豊かな自然が広がる高原の町。春になると山菜が採れ、夏になると高原野菜が実る。実をつけた稲穂が黄金色に輝く短い秋を迎え、そして静かな冬がやって来る。ここはまるで風景写真のカレンダーを見ているような、美しい四季のリズムが流れている。
 信濃町在住の戸田澄江さん(54歳)は、粘土を使って人形を制作している。つり上がった目と高い頬骨の決して可愛いとは言えない顔、人間味のある大きなおしり、日常の何気ない動作....。毎日の暮しの中にある、ありふれたひとコマを切りとった人形たち。その人形の動作、考えていることに思わずニンマリ。自分の近くにいる大切な人たちを思い浮かべるだろう。

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