この記事は2014年秋号です

南相木温泉・滝見の湯横を流れる犬ころの滝
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長野県の東南端、群馬県境に位置する南相木(みなみあいき)村。人口1,100人ほどの小さな村で、村の約90%を山林原野が占める自然豊かな場所。
南相木村は周囲を山々に囲まれ起伏に富んでいるため、南相木川の流域には急流が多くいくつもの滝がある。昼夜の寒暖差が大きく、高原野菜の産地として有名。標高900〜1,300mには白菜やレタスなどの広大な畑が広がっている。
春は山菜の宝庫、高原野菜が最盛期の夏、きのこ狩りが楽しめる秋、全面結氷する湖で穴釣りが楽しめる冬。大自然のある場所だからこそ楽しめる、味わい深い魅力があふれている。そんな南相木村は、過去5年間で人口の10%にあたる約120名が移住している。 |
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「早朝から暗くなるまで畑で仕事しています。毎日くたくたになりますけど、やりたい事がやれているから、今はとても充実しています」
南佐久郡南相木村で農業をしている中村泰斗さん(30歳)。大阪から南相木村に移り住んで7年になる。奥様の美恵子さんと小学1年生、4歳、10月で1歳を迎える男の子3人の5人で暮している。
南相木村には村営住宅が70戸以上あり、Iターンで移住された方も多く入居している。中村さん一家も村に移住した時から村営住宅に住んでいる。
「家賃が2万円ほどでかなり安いですし、とても快適に暮らせています。この村は水がとてもおいしいんです。水道の水が冷たくて、そのままおいしい。それに夏は涼しいから冷房いらず。夏は村からほとんど出ないですね(笑)」
村の村営住宅は入居時に小学生の子供がいる場合、家賃月額10,000円の賃料で借りる事ができる住宅もある。破格の賃料は、長野県外からの移住者に加え、近隣市町村からの移住もあるという。子育て支援も充実し、豊かな自然のなかでのびのびと子育てができると若い夫婦の移住も増えている。
泰斗さんは大阪府吹田市生まれ。大学生まで大阪で暮していた。大学時代の夏休みに、アルバイト雑誌で見つけた農作業の仕事に応募、夏休みの1ヶ月半住み込みで白菜農家で働いた。その場所は南相木村からもほど近い、南牧村野辺山高原だった。
「畑仕事は、それまでやった事はかったです。仕事は大変だったけど、楽しかった。苗を植える事から収穫して出荷するまでの作業をこなしていると、こんな風に野菜ができるんだと、野菜作りに興味がわきました」
その時に奥様の美恵子さんと出会ったという。大学卒業後、美恵子さんと共にワーキングホリデー制度で農業大国のオーストラリアへ渡豪。トマトやスイカ、リンゴ、メロンなどいくつかの農家で働きながら、1年ほどオーストラリアで暮した。
帰国後、泰斗さんと美恵子さんは結婚。大阪で1年ほど暮したが、農業をやりたいという思いがつのり、移住する場所を探し始めた。
いくつかの場所で移住の相談をし、検討した中で決めた長野県南相木村。美恵子さんの出身地でもあり、移住に関する支援、就農支援が充実していた。すぐに南相木村役場の人とやりとりを始め、移住。その時泰斗さんは23歳で、一番上のお子さんが1歳の時だったという。
長野県では、就農希望者の支援に積極的な熟練農業者を「里親(農業者)」として登録し、就農希望者に紹介して農業研修をサポートする「長野県新規就農里親制度」があり、県内での就農を支援している。また南相木村では畑の整備にかかる経費や農業用資材購入に対する補助など様々な支援事業がある。
泰斗さんは1年目は南相木村の白菜農家、2年目はホウレン草農家を紹介してもらい、栽培技術のノウハウを学びながら働いた。研修を経て、大きな機械を必要とせず、初期費用が少ないホウレン草を作る事を決め、家の近くに農地を借りた。現在ではハウス10戸ほどの敷地でホウレン草を栽培し出荷している。
「まだまだ村のなかでは小さな畑なんですよ」
その他にズッキーニやカリフラワーも出荷している。
研修先でたくさんの村の人に出会い、消防団に入るなど村の人達との関わりを大事にしてきた。
「村の人達は優しく、よくしてもらっています。今では嫁さんよりも知り合いが多いんじゃないかな」
おいしい空気、水、新鮮な高原野菜、のどかな生活環境。自然の恵みと家族の笑い声に包まれた毎日を送っている。 |
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