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THE信州 栄村 山ぶどうバッグ
 

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この記事は2014年夏号です

栄村 山ぶどうバッグ
栄村 山ぶどうバッグ

秋山木工生産組合

〒949-8321 長野県下水内郡栄村秋山郷

TEL.025-767-2210・2136

※お出かけの際は、在否をお電話でお問い合わせください。

鳥甲山の荒々しい山並みをを移す天池(栄村・秋山郷)

 長野県の最北端、栄村と新潟県津南町にまたがる秘境・秋山郷。苗場山(2145m)と鳥甲山(2037m)など2000m級の山々をはじめとする山林原野に囲まれている。平家の落人が隠れ住んだとも伝えられる秋山郷は豪雪地としても有名で、長い冬が終わり迎えたグリーンシーズンは、まばゆい芽吹きの緑に囲まれ、紅葉の秋にかけてどこもかもがビューポイントに。温泉資源が豊かな秋山郷には、宿泊施設や日帰り温泉も点在し、ドライブにもおすすめ。

 秋山郷・小赤沢地区にある工房で山ぶどうのツルでバッグを制作する島田司さん(57歳)を訪ねた。


 「しなやかで柔軟性がある。使っていくうちに、色が徐々に濃くなって艶がでてくるんです」。

 

 信州の秘境、秋山郷にある「秋山木工生産組合」の島田司さん(57歳)は、山ぶどうのツルでかごバッグを作り始めて17年ほどになるという。それまでも秋山郷で木のテーブルやとち鉢などの木工芸品を制作し販売してきた。かごバッグに興味を持ち、秋山郷に自生する山ぶどうを使ってかごバッグ作りを独学で始めた。

 

 材料となる山ぶどうのツルは島田さん自らが、山に入り採取している。

 

 「秋山郷の山奥まで取りに行くんです。やぶをかき分けて探し歩くんですけど、やぶ蚊なんかの虫がすごくてね。熊も出るような山奥まで採りに行くので大変な作業なんです」。

 

 採取する時期は1年のうち、6月中旬から7月中旬頃までの1ヶ月間。新緑の季節に地面から水分を十分に吸い、梅雨で湿度の高いこの時期だけ樹皮がはがしやすくなる。

 

 「時期になるとリュックをしょって、ほぼ毎日、雨が降っても山に入ります。行くとほぼ1日山で作業をしていますね」。熊は音よりも、匂いに敏感だと島田さんは話す。アウトドア用の蚊取り線香を炊き、帽子には湿布を張って香りをだす。人の気配を漂わせるのだという。

 

 「山にいて一番嫌だと思うのは、突然の悪天候で、昼間でも木々の中にいると、あたりが暗くなってしまう事」。方向を見失わないように注意する。

 

 山ぶどうのツルは、大きなものだと直径10cmほど。他の木々に巻き付いて自生している。扱いやすい直径5cmぐらいの山ぶどうのツルを選んで採っている。外側のバサバサした樹皮をはがし、その次の皮をはがす。ノコギリとカッターを使い、なるべく長く樹皮をその場ではがす。梅雨の時期だけで一年分の材料を集めるという。

 

 はぎ取ったツルは、一日水にさらして汚れを落とし、日陰干しで3ヶ月ほど乾燥させてから保存する。

 

 バッグを作り始める前に、乾燥した皮を水にひたし、やわらかくしてからバッグのデザインによって、細く裁断する。切り幅が一定でないときれいな編み目にならないので、刃を数枚つなげたお手製のカッターで均等にカット。厚さも一定ではないので、分厚いものは薄く削る。様々なクセのあるものを丹念に加工し、編みやすくしていく。

 

 「霧吹きで湿らせながら、編んでいきます。乾燥すると少し縮むんだけど、隙間ができないようにぎゅっと詰めながら編んでいくんです。なかなか力がいるんですよ」と島田さん。

 

 編み方も本などを参考に独学で始め、今では独自の編み方も増えた。網代(あじろ)編みなどスタンダードなものも作っているが、島田さんの作る作品で、ここ数年人気なものは細く三つ編みにしたツルを編み込んだバッグ。細やかで繊細な編み模様が女性に人気だ。 

 

 編み始めれば、シンプルなデザインのものであれば2日、デザインが複雑なものだと4〜5日ほどで完成するという。その後、編みあがったバッグ表面のケバをバーナーの火であぶり取る。ケバの部分だけパチパチと燃える。タワシで表面を磨き、またケバを取る事を繰り返す。

 

 「数年前、風邪を引いた時に、この磨く作業でほこりがでてつらかったから、ちょっと霧吹きで湿らせてから、金タワシで磨いてみたんです。そうしたら、いい艶が出てね。」

 

 鉄分などの成分を多く含んでいるため、酸化して色が変化し、やわらかな艶が出る。

 

 豪雪地帯の秋山郷の厳しい環境の中で育った山ぶどうのツルはとても丈夫。始めはちょっと堅い触り心地も、徐々にしなやかに、より使いやすくなる。

 

 「他の素材でも作ってみた事があるけど、やっぱり山ぶどうが一番艶の出方がきれい。使い込んでいくうちに、手脂で艶が出て、深みのある色に変化していくんです」。

 

 使うだけ育っていく、その過程を楽しめるバッグ。人の手によって紡ぎ出される豊かで素朴な風合いが魅力。日々の暮しに寄りそう逸品が、秋山郷で作られている。

 


栄村 山ぶどうバッグ

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