信州、長野の観光情報サイト THE信州  信州のイベントや信州の温泉宿など気になる情報が盛りだくさん!

THE信州 旅館 鳥屋沢 (とやさ)
 

過去の特集記事もご覧ください。

2024年 冬号 木島平村 野沢菜漬け / 春号 佐久穂町 クラフトビール 

2023年 冬号 野沢温泉村 温泉まんぢう / 春号 飯山市 きよかわ / 夏号 津南町 株式会社 麓 / 秋号 松川町 まつたけ小屋 梅松苑

2022年 冬号 津南町 雪下にんじん / 春号 長野市 フォレストウェディング戸隠 / 夏号 須坂市 中井ぶどう畑 / 秋号 松川町 信州まし野ワイン

2021年 冬号 野沢温泉村 富屋酒店 / 春号 信濃町 高橋助作酒造店 / 夏号 小海町 酒舗清水屋 / 秋号 松川町 フルーツガーデン北沢

2020年 冬号 小海町 わかさぎ釣り / 春号 佐久穂町 黒澤酒造 / 夏号 中野市 つどい農園 / 秋号 松川町 Vin Vie

2019年 冬号 須坂市 村山早生ごぼう / 春号 阿智村 ジャム工房 / 夏号 南相木村 夏いちご 秋号 小海町さかまき農園

2018年 冬号 高森町 市田柿 / 春号 松本市新奈川温泉 旅館鳥屋沢 / 夏号 小海町 たかちゃん・ふぁーむ / 秋号 飯山市 旬菜料理はたの

2017年 冬号 野沢温泉村 とみき漬物 / 春号 中野市 押鐘園 さくらんぼ / 夏号 松本市奈川 好きですね奈川 / 秋号 飯山市 角口酒造店

2016年 冬号 南牧村 野辺山霧下キムチ / 春号 小海町 珈琲焙煎工房2+1 / 夏号 佐久市 銘菓「五稜郭」玉屋 / 秋号 佐久穂町 りんごやSUDA

2015年 冬号 高森町 信州市田酪農 / 春号 飯山市 田中屋酒造店 / 夏号 さかえむらトマトジュース / 秋号 木島平村 芳川養蜂場

2014年 冬号 須坂市 楠わいなりー / 春号 木島平村 オーベルジュ・グルービー / 夏号 栄村 山ぶどうバッグ / 秋号南相木村信州田舎暮らし

2013年 冬号 佐久穂町 きたやつハム / 春号 佐久穂町 八千穂漁業 / 夏号 南牧村 滝沢牧場 / 秋号 松本市・乗鞍高原 樽スピーカー

2012年 冬号 池田町 陶芸 / 春号 白馬村 革バッグ / 夏号 津南町 染織 / 秋号 信濃町 暮らしの人形

2011年 冬号 白馬村 木彫りアート / 春号 須坂市 はんこ / 夏号 塩尻市 ボタニカルアート / 秋号 飯山市 シュガーアート

2010年 冬号 須坂市 ミニ和紙人形 / 春号 筑北村 木工スプーン / 夏号 松川村 古布手芸 / 秋号 池田町 バッグ

2009年 冬号 須坂市 まゆ人形 / 春号 布ぞうり・布スリッパ / 夏号 南相木村 機織り / 秋号 小海町 木彫り人形

2008年 冬号 中野市土人形 / 春号 松川村お面 / 夏号 信濃町南米民族音楽 / 秋号 佐久穂町創作リース

最新記事にもどる

この記事は2018年春号です

旅館 鳥屋沢 (とやさ)
旅館 鳥屋沢 (とやさ)

高宮澄男
旅館 鳥屋沢 (とやさ)
〒390-1611長野県松本市奈川2562-2
TEL.0263-79-2268

鷹の渡り

タカの渡り(白樺峠・9月〜10月中旬頃)

 すぐうしろに飛騨高山を従え、乗鞍岳をはじめ、四方を山に囲まれたとてものどかな集落「松本奈川」。かつて野麦峠を越えて工女たちがこの里を往来し、師走ともなればブリ街道となって松本平に『年取魚』が運ばれた。さまざまな歴史が行き交ったこの故郷は、今もほんのり温かい、素朴な心を残す。

 奈川の白樺峠では毎年9月〜10月中旬頃「タカの渡り」が見られる。「サシバが上昇気流を利用し飛翔高度を上げて滑空するタカ柱は圧巻。渡り鳥。うちの宿の由来はそこから来てるんですよ」。その昔、この沢を訪れた渡り鳥たちのために、村人は鳥屋(とや)を置き、休息の場を与えた。そして、いつしか人はこの沢を鳥屋沢(とやさ)と呼ぶようになった。高宮澄男さん(54)は、旅の疲れを想い気づかう気持ちから生まれた沢の名「鳥屋沢」を平成4年の宿屋開業のときに宿名とした。


 奈川は梓川水系奈川渡ダム(梓湖)で育った60cmオーバーのヤマメ(陸封型サクラマス)やイワナが遡上することで知られている。新奈川温泉「鳥屋沢」のご主人、高宮澄男さんは、渓流釣りにおいて県内外にも知られるほどの腕前だ。

 

 「ここは山と川しかない。こういう場所にいたんで、釣りが好きなんだと思います。小学校5年生のときに、釣り大会があり、子ども部門で優勝したんです。そこからどんどんはまっていきました」。

 

 渓流釣りにはエサ釣り、ルアーフィッシング、フライフィッシング、テンカラなどの釣り方がある。高宮さんの一番最初はエサ釣りだった。川虫を自分で捕り、1本の竹竿で釣っていた。その後、ルアーやフライフィッシングも経験してきたがシンプルでも奥が深いテンカラに惚れ込んでいった。現在はエサ釣りとテンカラ(和式毛鉤釣り)のみである。テンカラはエサ釣りよりも太い糸を使い、その先に毛鉤をつけムチのように魚のいそうなポイントに飛ばして川の流れに乗せ、魚の食いつきを狙う釣法。

 

 「警戒心が強いので糸で水面を叩いてしまえば逃げちゃいます。魚が見えていても釣れない。向こうからも見えてますからね(笑)。エサと違い疑似餌なので、水面途中まで来ても見破って食わずに引き返したり、咥えても違和感があるとすぐに吐き出しちゃいますからモタモタしてられません。難しいけれど、自分の狙った場所で魚が反応し釣った!というのが魅力。だからみなさん、おもしろくてやめられないんでしょうね」と高宮さん。

 

 「最近は、釣ってもあんまり持ち帰ってこないんです。川岸に石で囲ってちょっとした生け簀を作り、魚を入れてモデル撮影会。写真だけ撮っておかえりいただく。捕るんじゃなくて、撮るね。魚にとって人間の体温は高熱なんですよ。だから手を冷やしておいて、やさしく触れるんです。たくさん釣って 全部持っていっちゃうんじゃなくて、そういった楽しみ方も伝えています」。

 

 奈川域の河川で釣りの出来る期間は毎年2月16日~9月30日。ちょうど禁漁期間に入る頃から、イワナやヤマメなどの渓流魚は産卵期に入る。この期間に釣りを禁止することにより、魚の繁殖を守ることができる。
 

 「鳥屋沢」に訪れる客は釣り好きな人が多い。「自分が釣り好きなんで、やっぱり釣り好きなお客さんが集まるんですね」。この場所へ来てこの渓相を見ると、みんなとても気に入ってくれ、何度も来てくれるのだそう。宿泊客には天然の川魚のほか、信州の田舎料理を提供している。なかでも奈川在来の蕎麦粉を使い、高宮さん自らが打つ本格手打ち蕎麦は絶品。高宮さんの“蕎麦打ち”は、「おなかいっぱい食べたい」と思って自分で打ってみようと思ったのが始まりなのだそう。もともと蕎麦好きで、蕎麦屋へ行くと7枚も8枚も食べてしまう。「高級料理屋さんへ行ったくらいの値段になっちゃうんです(笑)。だったら自分で打って、おなかいっぱい食べたいなと」。子どものころから、母親が打つのを見ていたこともあり、あちこち食べ歩いた経験と知り合いから打ち方を習得した。

 

 冷涼な気候と澄んだ空気、標高1200mの高地で育った奈川の蕎麦は特に風味が豊かで、一般の秋蕎麦よりも栄養価が高く、奥深い味わい。また、小盛りしたお蕎麦をとうじかごに入れ、季節の山菜、キノコが入ったたっぷりのつゆ(鍋)に浸し、さっと湯がいて食べる「とうじ蕎麦」は、この地に古くから伝わる伝統の味。つゆに入る、山菜やキノコの味がまた格別。奈川では、春は山菜、秋はキノコと、季節に応じて違う楽しみができるのも魅力なのだ。「楽しいね。自然の中にいると、いろんなことを忘れられて。至福のひとときです」。

 

 「まだまだここには手つかずの自然がいっぱい残っているんです。ですから、本当に地域の人もやさしいです。失われつつ懐かしい田舎の風景…一度来ていただければこの良さがわかるのかな。この地に足を運んでもらって、空気感と一緒に川魚、蕎麦、山菜、キノコ、野菜など食べてもらいたいっていうのが一番ですよね。あと、地域の人たちに触れて欲しいですね」。


旅館 鳥屋沢 (とやさ)

Copyright (C) 2008 The Sinshu. All Rights Reserved.